かたい物とやわらかい物


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CO2レーザー加工機では金属などは加工できません。これは金属は熱伝導率が高いためにエネルギーが拡散してしまうためのようです。このため金属以外の材料でも熱伝導率の高い材料は加工できません。カフェで試して加工できなかった材料としては、アルミなどの金属の他に炭素の板があります。

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ただ、金属でも表面を黒化処理することでレーザー光が吸収され易くなり、彫刻は可能とのことです。
そこで試しに料理用の黒いアルミ箔を加工してみました。
加工機はEPILOG mini 60W、加工パラメータは最高出力のSpeed=1%, Power=100%です。

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加工部分の拡大写真。アルミが融解した痕が分かります。
でも貫通はしていません。

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次に木材を敷くことで熱の拡散が抑えられるか試してみました。
結果は何も敷かない時に比べて若干良くなりましたが、実用的な品質には程遠いです。
また、レーザーがアルミの断面で反射したようで、レーザーを当てていないはずの周囲の木材が焦げています。
レーザーが数十ミクロンの断面でも簡単に反射することを改めて実感しました。

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こちらは5mm厚のアクリル板でサンドしてφ10mmの円形加工してみた例。熱の広がりに伴い、アクリルの方が融解しています。

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裏面。レーザーはアルミを貫通しませんでした。

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一方、やわらかい物としてポリエチレンフォームのカットも試してみました。
こちらはSpeed=1%, Power=5%です。

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カットしてみたのは高島(株)社製カラーポリエチレンフォームのハード10mm厚です。
ポリエチレンフォームやウレタンフォームは発泡密度などの違いによりかなりの種類があります。
あまり発泡密度が高く、柔らかい物は周囲も融解し易く、綺麗に切れないようです。
また厚みは薄い方が綺麗なのは他の材料と同様です。

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断面は大体綺麗ですが、

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場所によっては綺麗に抜けていないところがありました。
おそらく材料のたわみによる、フォーカスのずれが原因です。

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ちなみに今回作ってみたのは工具用のインナーケースです。
実際に各材料の加工結果をご覧になりたい方は店頭でお尋ねください。
またインナーケースのデータ(.cdr)はここにあります。
もう少し各工具のラインを内側にした方が工具が固定されて良いかもしれません。

結論:金属のカットはアルミ箔ですら無理。彫刻は可能性あり。ポリエチレンフォームのようにやわらかい物は出力を抑えてゆっくり切ると綺麗で、ガスの発生も抑えられる。
パラメータは EPILOG mini24-60W 適正出力パラメータ にまとめています。

5/15 FabLab TsukubaとKamakuraが誕生!


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5/15(Sun) 日本初のFabLabが、つくばと鎌倉に誕生しました!
この日はFPGA-CAFE/FabLab Tsukubaの営業日でしたが、店長はお店をメイドさんにお任せして鎌倉の方に伺って来ました!

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以下、FabLab Kamakuraの様子です。
鎌倉駅の西口から出て市役所前の交差点を右折します。

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観光客の多い通りを北に歩いて行きます。

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途中、入ってみたくなる雑貨屋さんがいくつかあります。

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と、左側に突然「蔵」が現れます。

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人通りの多い道に面していて、カフェか何かに見えます。

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この蔵にはFabLab以外にも設計事務所など2棟入っているそうです。

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入口は向かって左側にあります。

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先日うちのレーザー加工機で切り抜いた合板が見事に看板になっています。

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入口より

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うちとはまた違った「和」の空間です。

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ここがメインスペースです。
この日はお昼のバーベキューに向けて仕込みを行っていました。

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奥にはCraftRoboの大きいのが。

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CraftRoboで切り出された作品の数々。
紙、布、木などを使った作品は暖かくていいですね・・

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この椅子は田中先生がご自分の体系に合わせて大学のNC機で出力されたそうです。

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そして2階へ

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2階は屋根裏部屋のようになっていて、いろいろな工作機械があります。

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ローランドDGのモデラ

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3Dプリンタ(右)と3Dスキャナ(左)

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はんだ付けスペースには田中先生がMITで作られた自動工作機械が。

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ディジタルミシン

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CraftRoboと機織り機など

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田中先生はこの2階のソファーで寝泊まりしたりしているそうです。

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14日から2泊3日で行ってきたのですが、ここも時間を忘れてしまう空間でした・・

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15日の午後は近くの浜辺でバーベキューでした。

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@Fantom_JACさんが風が強くて火が弱い中、がんばって作ってくださった料理がとてもおいしかったです!
調味料は横浜の中華街などで仕入れて来られたとか。

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そして前日の14日は田中先生の誕生日だったとのことで、急遽サプライズパーティーが!
ニールからのビデオレターまであってびっくり!

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学生さんが遅くまでモデラとCraftRoboで作業していた正体は、この田中オニギリでした!
FabLab Kamakuraは毎週土曜日にオープンするそうです。
FPGA-CAFE/FabLab Tsukubaも同じ週一ですが、客層も分野もかなり異なるので
これからがとても楽しみです。

FabLab Tsukubaの準備

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5/15(Sun)よりFPGA-CAFEはFabLab Tsukubaとしてスタートします。
今日はその準備としてFabLab Japanで翻訳中の「ファブラボ憲章日本語版(案)」の木版プレートを作成しました。
FabLabの条件の1番に「ファブラボ憲章の理念に従って運営され、ファブラボ憲章を印刷して掲示してあること」とあります。
「ファブラボ憲章」は、FabLabの目的や利用方法などの概略をまとめたもので、内容は下記の通りです。


ファブラボ憲章日本語版(案)

目的: FabLab(ファブラボ)とは、3次元プリンタやカッティングマシンなどの工作機械を備えた、誰もが使えるオープンな市民制作工房の世界的なネッ トワークです。大量生産やマーケットの論理に制約されていた「ものづくり」を解放し、市民ひとりひとりが自ら欲しいものをつくりだせるようになる社会が目標に掲げています。

利用法:人を傷つけるものを除けば、(ほぼ)あらゆるものを作ることができます。利用にあたっては、一人一人が自ら試行錯誤して操作法を学び、ラボの使用法や機材利用のノウハウを共有・蓄積・継承していくことが求められます。

学習:ファブラボでは、実際のプロジェクトを行いながら、自ら機材の使い方を覚え、他のメンバーと互いに教え合い、学び合うことが基本です。また、その試行錯誤の過程をドキュメンテーション(文書化)し、コツやノウハウをまとめたインストラクション(教材)や機材のマニュアルを使用者が共同で作 りあげていくことが求められます。

ファブラボを利用する人の責任
安全:人や周りを怪我させない作業の仕方を覚えること。
掃除:あなたが来た初めの状態よりも、ラボを綺麗に掃除してから帰ること。
維持:ツールや材料のメンテナンスや交換を手伝い、さらにそこで起きた出来事をレポートすること。

ビジネス:
ファブラボでは商業活動(ビジネス・インキュベーション)は可能ですが、オープンなアクセスや情報公開とコンフリクトを起こしてはいけません。ラボの中の みならず、外でも大きく成長し、最終的には、ラボやラボのメンバー、ネットワーク、オリジナルの開発者らにその成果を還元することが期待されます。

draft: August 30, 2007
日本語版: 5/23 2010


上記内容は現在FabLab Japanにて審議中で、近く「(仮)」が取れる予定です。

FabLabレシピの例

今日はFabLab Kamakuraと初めてskypeで接続してみました。

内容はFabSourceという、FabLabで作成する作品、製品の設計図、製造方法などをどのように共有して行くかを検討しているグループとの打ち合わせを行いました。
FabLabで作る物と言っても、分野も使うツールも様々なため、どのようにまとめて行くかが課題となっています。

FPGA-CAFEでも各ツールの使用条件としてオープンソースにすることを要求していますが、同様の問題を抱えています。また、FabLabの利用者が簡単にソースを公開できるよう、公開サイトに使い易い雛型を用意することが重要です。


下記、作り方(レシピ)のサンプルです。これで同じ物や改良版を作成できるでしょうか?



タイトル: Webカメラ固定台
地震ですぐに落っこちそうなWebカメラを、モニタの上辺りにきちんと固定したい。」
というのが今回の要求課題です。この解決方法としてはいろいろ考えられますが、今回はモニタの上に丁度アルミフレームが通っていたので、これに固定する台を作ることにします。載せるWebカメラLogicool社製のQCAM-200RXです。


材料:
・ジュラコン(ポリアセタール)板 サイズ=260x220mm以上, t=3mm
・垂直取付スペーサ 廣杉計器 VAB-306E 8個
・キャップボルト ウィルコ UCBT-0304 (φ3mm, l=4mm) 16個
・後入れナット(S EasyナットL) M5 SUS SFN-EL5 2個
・ナベネジ φ5mm, l=11mm 2個


主要ツール:
・CorelDRAW X5
・EPILOG mini24-60W


ソース:
・台の設計図(CorelDRAW X5形式): webcam_folder01.cdr


作り方:


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1.測長


まず、台に載せるWebカメラのおおよその寸法を測ります。


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2.設計

CorelDRAW X5上で各パーツを設計します。
レーザー加工するパーツは4つです。
また加工はカットのみなので全て「極細線」で描きます。
イラストレータの場合カット線は「0.1pt」となります。


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3.レーザー加工

材料をセットしてカットします。
材料は3mm厚のジュラコンにしました。
台はアルミフレームにネジで直接固定するので、アクリルでは強度が不足するためです。


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4.組み立て

ジュラコンの板同士は垂直取付スペーサで接続します。


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5.台の組み立て完了

4面を繋いで台が完成。


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6.アルミフレームへの取り付け1

アルミフレーム側には後入れナットを取り付けます。今回の穴径は5mmです。


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7.アルミフレームへの取り付け2

台をネジで取り付けます。


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8.完成

Webカメラを載せて完成です。

FabLab Kamakuraの看板作成

5月15日(Sun)に FabLab Kamakura がオープンとのことで、その看板の作成を依頼されました。

FabLabとはMIT Bits and AtomsセンターのNeil Gershenfeld氏が提唱し、世界中に広まりつつある新しいものづくりのかたち、
及びその活動を行うためのスペースの総称です。
日本では現在、慶應義塾大学SFCの田中浩也氏、多摩美術大学久保田晃弘氏らが中心となって活動を行っています。

国内ではまだどちらかと言うと、デザインやアート分野の方が中心という印象ですが、その目的や思想はFPGA-CAFEの
それと非常に近く、今後FPGA-CAFEも積極的にFabLabのコミュニティに参加していこうと思います。

先日、田中先生がFPGA-CAFEに来られた際、最初のコラボレーションとして、来月鎌倉でオープンするFabLabの看板の
パーツ作成を依頼されました(FabLab Kamakuraにも最終的にはレーザー加工機は導入されるようです)。
当初はFPGA-CAFEに来られた際に加工してお持ち帰り頂く予定でしたが、予想以上に話が盛り上がり、加工の時間が
無くなってしまったため、後程加工材料を送って頂くことになりました。


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FabLab Kamakuraから届いた合板。

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初めての材料なので、まずはテスト加工によるパラメータ出し。

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メールで送ってもらったデータをEPILOG Mini24のワークスペースに再編集して加工開始。
加工データ(Adobe Illustrator CS5形式): FabLabkamakura_sign_MINI24.ai

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カット完了。



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ただ、このまま取り出すと、各パーツがバラバラになってしまうので、

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マスキングテープで上から仮固定して完了。

さてどんな看板になるのか楽しみです。
なお、5/15(Sun)はFPGA-CAFEは通常営業ですが、私は鎌倉の方にお邪魔するため不在となります。

2011年3月11日(金) 14時46分の被害とその後

つくば市震度6弱でした。今回の地震は震度が大きいだけでなく、揺れた時間2〜3分と長かったことが被害を大きくした要因と思われます。
FPGA-CAFEの入っているテナントは1979年12月築と30年以上前の鉄骨造陸屋根2階建てです。しかし外観上、建物への被害は軽微でした。
また機材もいろいろ転倒、落下しましたが、幸いこれらには大きな被害はありませんでした。
書類や部品などが散乱して、整理する時間を取られたことが一番の被害だったと思います。


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まずは玄関。
傘立て倒れた。

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2階に上がる階段の最上段が割れた。

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今回、金額的に一番被害が大きかったのがエアコンの室外機。

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固定用のベースが割れて、ボルトが外れてしまった。
中のファンがどこかに引っかかり、そのままモーターが焼き切れてしまった。
交換費用は4万円程度。ただし、ベースは未だに壊れたまま。

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カウンター背面の棚からは物がいろいろ転落。

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なんとか落ちずにがんばった人たちw

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大型ディスプレイは事前にワイヤーを掛けていたことが功を奏して無傷!

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だがしかし、まさかのプロッター転落!

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下にあったものをいろいろ粉砕したが、プロッター自体は運良く印刷動作には問題なし。
同じく机の上にあったレーザープリンタも消えていたけれど、こちらも無事。

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奥のサーバールームがひどいことに!

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19inchラックを載せていた軽量ブロックが崩れたために、ラックごと転倒。
これで光ファイバーを破損。

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本棚前もひどい。

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でも幸い転倒した本棚は1つのみ。転倒しなかったところは意外と本も落ちていなかった。

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ここは顕微鏡のアームの固定ネジを緩めていたことが被害を大きくした原因。

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Ust配信関連の機材もいくつか破損。

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漆喰は地震時に被害が大きいことがわかりました!

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ハンダ付けコーナー側の壁の一部が、換気扇ごと落下。

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全く予想していなかったのが、E26金口の電球(蛍光灯)がいくつか落下していたこと。振動で緩んで落ちたみたい。

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完全断水は約3日間。天久保2丁目地区は幸運にも電気は途切れませんでした。
ただスーパー、コンビニから食糧が消え、約20年ぶりにカップラーメンを食べました。
で、最近のカップラーメンの味の進化ぶりに驚いたり。
特に麺がとても美味しくなっている!

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TVはアンテナが繋がっていないので、ニュースは主にWiMAX+Ust。
地震関連情報はWebのように、こちらから情報を取りに行くメディアより、
TVやラジオのような放送メディアの方が有用だと実感。

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天井からの雨漏りが怖いので、ブルーシートで対策。

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復旧作業の合間を見て、ハンダ付けコーナーの窓側にガイガーカウンタを設置。

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現在の観測値はこちら

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プロッタは落ちないように木材で固定。

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サーバールームは工作スペースに改装w

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外からも作業の様子が見えるようになっています。

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ハンダ付けコーナーは完全復帰。

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冷蔵庫のジンジャーエールは最初から倒して置く方向でw

約1ヶ月間、通常の業務はほとんどできませんでしたが、4/24よりなんとかカフェは営業を再開しました。
今後も地震対策と書類と部品の整理はしばらく続きそうです。

レーザー加工機のトラブル

なんかとても久しぶりのblog更新です。
twitterで細かくつぶやく方が手軽なので、こちらはある程度まとまった情報を掲載して行こうと思います。


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昨夜、EPILOG社の Legend Mini24 Laser を使用中に思わぬトラブルに遭遇しました。これはEPILOGのレーザー加工機のヘッド。

レーザー発振管から出力されたレーザーはミラーでヘッドまで送られ、最終的に材料に向けて凸レンズで集光してエネルギー密度を高めています。従って、焦点を合わせる必要があり、材料からレンズまでの距離をテーブルを上下に動かして調整します。


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この際、EPILOGのレーザー加工機にはオートフォーカス機能があり、そのために材料までの高さを検出するためのセンサーがヘッドの下部に付いています。

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トラブルはこのセンサーが高さの検出に失敗したことで起きました。
写真のように、たまたまセンサーが既に材料の切り抜いた部分に位置したため、センサーが材料に当たらず、テーブルが上昇を続けてしまいました。テーブルは上部のアクチュエータにぶつかっても止まる様子が無く、テーブルを駆動しているモーターから異音がしたため電源を強制切断しました。

幸い、ヘッドには材料がぶつからなかったので大きな破損はありませんでしたが、リミットスイッチによる制限やモータの負荷監視を行っていないのには驚きです。


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代理店に問い合わせたところ、ときどきあるトラブルらしく、すぐに対処方法を教えてくれました。電源を切った状態で前面のパネルを開けると、底面にベルトが見えます。

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この手前のベルトを右方向(矢印の方向)に引っ張るとテーブルが手動で下げられます。ということで無事復帰しました!

ただこのとき、モーターの起電力で制御パネルのLEDが点灯しました。あまり速く引っ張ると制御回路にダメージを与えそうです。いろいろと、もう少し安全設計をがんばって欲しいと思いますが、そういえばこのクラスのレーザー加工機(彫刻機)には国産機がありませんね・・

つづく。